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3つの恋のお題【BA】

2011.08.11 *Thu
ブラアロへの3つの恋のお題

眠りにつく前に/ただ傍に居てくれたらそれだけで良かった/来ないならこっちから


1.『眠りにつく前に』

聞き慣れた声で名前を呼ばれ椅子に腰掛けていたブラスカがゆっくりと戸口に顔を向ければ、そこには青ざめた顔をした青年が立っていた。
「アーロン」
無事だったんだね。よかった。ブラスカがそう笑うと、相手の表情が歪んだ。
アーロンはブラスカが引き取り育てた孤児で、18で傭兵となって宿舎で暮らすようになるまで同じ屋根の下で家族同然に暮らしていた。本来なら互いの無事をもっと喜べていたはずだった。
「…亡くなったと」
搾り出すようなアーロンの声に笑ったまま小さく頷く。いつだってブラスカの顔から笑みが消えることはないのだが、相手の悲しみまで引き取るようにアーロンの顔は苦痛をありありと映し出す。
「すみません…」
「君が謝ることじゃない」
来るのが遅くなったこと、町を守れなかったこと…アーロンの謝罪には様々な意味が含まれているのがわかった。しかしそのどれひとつとっても彼のせいではない。
傭兵として雇われている彼がシンに襲われた町を放って自由に動けるわけもなく、またシンの暴走は人間の力で、ましてや彼一人の力でなんとか出来るわけもないのだ。
アーロンの顔には疲弊の色が張り付き、着衣はどこもかしこも汚れていた。この町の惨状の中で奔走した誰もが同じ姿をしていた。ブラスカも含めて。
きっと自由な時間が出来て一番にここへ駆け付けたのだろう。そして妻が亡くなったことを知り、彼のせいではないというのに謝罪し心を痛めている。それで十分だった。
「今夜は帰らなくていいなら…」
「ブラスカ様!」
椅子から立ち上がろうとしたブラスカがよろめき、すぐさま駆け寄ったアーロンに抱き留められる。近くで見た彼の顔は更に青ざめて見えた。
「…すまない、少し疲れているようだ」
目の前で妻を失い、その悲劇を悲しむ間もなく町の復興に取り組んでいた。筆舌しがたい光景の前で唇を噛み締め前に進むか、全てを投げ出し嘆き哀しむか、人々に許された行動は二択しかなく、ブラスカは前者だった。
だからといって平気でいられるわけがない。心が麻痺し壊れてしまう者もいる。幸いブラスカの家は被害がなく休めるベッドもあるというのに、心も体も酷く疲れているというのに、浅い眠りについてもすぐに目覚めてしまう日々が続いていた。
もう大丈夫、というブラスカの言葉は無視され、アーロンの腕に支えられてベッドへ誘導された。
「休んでください」
「大丈夫だよ」
「ダメです!」
滅多に声を荒げることのないアーロンの悲痛な叫びに似た言葉が部屋に響いた。屈強な姿に似つかわしくない今にも泣き出しそうな顔。
「あなたを失いたくない」
ブラスカの事となると途端に平静を装うことが出来なくなるのは昔から変わらない。
なんて顔するんだい、アーロン。馬鹿だなあ。私は大丈夫だよ。
そう言う代わりにブラスカは願いを口にした。
「だったら、一緒に寝てくれるかい?」
広すぎるんだ、ベッドが。一人で寝るにはとても広すぎて、それに冷たくて、落ち着いて眠れないんだ。だから、アーロン。…やっぱりおかしいね、そんなの。
自分でも普通じゃないことを頼んでいる自覚はあった。そして自分が普通じゃない自覚も。
「…わかりました」
答えたアーロンの声は戸惑いが滲み出ていた。
ブラスカの体を支えて先に横にならせたアーロンは汚れた上着を脱いで躊躇いがちに自らの体もベッドに潜り込ませた。
「昔を思い出すね」
「…そうですね」
遠い昔、幼いアーロンがブラスカにお願いした数少ない頼み事。
『眠るまで側にいてもらえませんか』
断られることに怯え、それよりも一人になることをもっと怯えているに違いないアーロンが、遠慮がちに口にした願い。
子供らしからぬ遠慮をし、甘えることを知らないアーロンの小さな願いはブラスカの胸を打ち、その小さな体を抱きしめてやりたくなった。
だったら一緒に寝ようか。そう答えた時のアーロンの安堵した表情は、生んだこともない自分の息子のように愛しかった。

「…アーロン」
ベッドの中で向かい合って呼びかけると、アーロンの目が僅かにたじろいだ。
「はい」
「少し触れていてもいいかな」
「…はい」
冷たくなった妻の手が忘れられなかった。無性に人の体温を感じたかった。
そっと手を伸ばし探り当てた相手の手に重ねた。アーロンは目を伏せている。生きている者の温もりがそこにはあって、心が少しだけ落ち着く。
ああ、アーロン。そんなすまなそうな顔をしないでいいんだよ。
酷い事をしているのは私の方だ。君の気持ちを知りながら、その気持ちを利用して残酷なお願いをしているのだから。そう、私は君の想いを知っている。だから君は、私にも妻にも、申し訳ないなどと思う必要はない。
「眠りにつくまでこうしていても?」
「…構いません」
「ありがとう」
重ねた手をそっと握る。握った手はぴくりと奮え、恐る恐る指の端がブラスカの手に触れ返す。
伏せられていた視線が長い睫毛を持ち上げゆっくりとブラスカの元へ返った。
悲哀と憂いに満ちたその眼差しの奥に芽生えたたものを私は知っている。そして近い未来に自らそれに触れようと手を伸ばすだろう汚い自分を私は他人事のように見ている。ごめんよアーロン。こんな私を君は許してくれるだろうか。
枕に埋めた頭が重くなっていく。今夜は眠れそうな気がした。おやすみ、と瞼を閉じた後で、一拍置いて返るおやすみなさいの言葉を聞いて、眠りにつく前には既に考える事を完全に放棄した。ただ重なる手の温度だけが自分の存在が確かにそこにあることを示しているようだった。


………………………………………
ブラスカって聖人みたいなイメージもあるけど、普通に考えれば人間には汚い部分とか暗い部分もあるわけで。
前に召喚士になると決めた後にブラスカに生まれた葛藤の話を書いたけど、今回は一人の人間としての話。
さこさんと生い立ち話をしていて、自分はキャラの生い立ち設定をしてこなかったなあと。
孤児だったアーロンをブラスカが引き取る、というさこさんのお話から浮かんだ二人の関係でBA書かせていただきました。
思った通りに話が運ばなかったんですけど(笑)
普通なら妻を失ってすぐに他の人に走るなんてないよなーとは思うけど、あまりに辛い現状に心が麻痺しかけて逃げ場を求める、ということはあるかも、と。じゃなきゃ大事にしてたはずのアーロンに手を出すこともないかなとか。いくら好かれていようと。

さこさんが考えてらしたBA派生と私のそれは違うんですが、人それぞれ考える事が違って面白い。
いい機会をいただいてありがとうございます。
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テンプレート配布者:サリイ (素材:ふるるか) ・・・ 
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