FC2ブログ

スポンサーサイト

--.--.-- *--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

将来のユメ

2011.07.09 *Sat
スタジアムへ出掛けようとして、玄関のドアの前で振り返る。
「試合、見に来るんだろ?」
妻が頷く前に、彼女の後ろに体を隠した息子が顔を覗かせてこちらを睨んだ。
「行かない!…ジェクトなんか負けちゃえばいいんだ」
「ティーダ!」
窘める妻越しにぶつかる視線を受け止めてジェクトはニヤリと笑った。
「今日は負けるかもしれねえぞ」
訝しげな表情を浮かべた息子の前にしゃがみ込み、ずいと顔を寄せる。小さな足が僅かに後ずさる。
「今日負けなけりゃ明日負けるかもしれねえ。オレが負けるとこ見てえなら、負けるまでずっと見に来い」
金色の柔らかい髪をジェクトの武骨な手がくしゃくしゃと乱暴に撫でると、息子はイヤイヤをするように身を反らした。
それでもすぐに視線は父親をきつく捉え直す。母親の服を握り締めながらも、目を離さない。
いい目をしやがるじゃねえか。
立ち上がり遥か遠くなった息子の目を見下ろしてフフンと鼻で笑ってみせる。存在するかも怪しい父親の威厳を示す為に。
行ってくる、の言葉の代わりに妻の頬に軽く口付け家を出る。しばらく歩けば自然と笑いが零れた。

こりゃ意地でも負けらんねえな。

息子に嫌われている自覚は十分過ぎるほどにある。父親として決して嬉しいことではない。
我が子が誕生した時、ジェクトも他の父親と同じ様に手放しで喜んだ。壊れ物に触れるように初めて息子を腕に抱いた日の事は今でも鮮明に覚えている。
いつの日からだろう。
泣かせる事ばかりが得意になったのは。
ティーダが自分の手を払いのけるようになったのは。

ジェクトには息子を自分と同じブリッツ選手にしたいという夢があった。それもただの選手ではない。キングオブブリッツと呼ばれる自分のような一流の選手に、だ。
幸い息子はブリッツ自体には興味を持っているようだった。
ただし、やれと押し付ければ間違いなく反発するだろう。ましてや大嫌いな父親と同じ職業だ。
生半可な気持ちでてっぺんに上り詰められる程この世界が甘くないことは自分が一番知っている。
だからこそ今はその反発心で自分を越えようと思ってくれればいいと思っている。
その為なら今より嫌われても構わない。

それまでは自分が座っているキングの座は誰にも譲れない。
ぶざまな姿など絶対に見せるわけにはいかなかった。
たとえ父親として嫌われていようと、息子に誇れるものといえば自分にはそれしか見つからないのだから。


………………………………………

何年も前に書いてあったネタを少し修正して使用。
親父はつらいよ。
スポンサーサイト
CATEGORY : 365日のお題



Copyright © JSNO3(仮) All Rights Reserved.
テンプレート配布者:サリイ (素材:ふるるか) ・・・ 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。