スポンサーサイト

--.--.-- *--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ココア

2007.12.09 *Sun
ダイニングに足を踏み入れると、甘ったるい匂いが鼻をつく。
アーロンがスプーンで掻き回しているマグカップの中に不透明な茶色が見えた。
「ココアか?」
声を掛けられチラリと視線を上げたアーロンはスプーンを掻き回す手を止めて「ああ」と返答した。
「あんたも飲むか?」
「や、いい」
異界ってのは不思議なところだ。
オレたちの生命はとっくになくなってるってのに、飲んだり食ったり、が出来る。
ウマイだのマズイだのって味も人間界にいた時と同じようにわかる。
つまり、生きてた頃となんにも変わらねえってわけだ。
「ティーダが好きでよく飲んでいたんだ」
一口啜った後で、アーロンはそうさらりと言う。
アーロンの口からガキの名前を聞くのは正直居心地が悪い。
父親であるオレが知らないガキをアーロンが知ってる。軽い嫉妬だ。
もちろんそんなことは格好悪くて噫にも出さないが、アーロンはそれに気付いているんだろう、いつもどうでもいいことを言うようにサラっとガキの名を口にする。
「そんな甘いもんばっか飲んでるあたりがガキだな」
「俺も同じように言ったが『ココアは体にいいんだって』と」
「言い訳だな」
「だろうな」
アーロンは片方の口角を上げて小さく笑ってもう一度「飲むか?」と尋ねてきた。
「…そろそろ体気にしねえとまずい年だしな」
異界にいて年も体もあったもんじゃないが、一度断ったものを『息子の好物なら』などと素直に言えるオレじゃない事もアーロンはよくわかっている。
「だな」
短い返答で席を立ち、食器棚からもうひとつマグカップを取り出した。
何も言われないなら言われないで妙に気恥ずかしいが、アーロンはそんなことも意に介さない様子でココアを入れる。
差し出されたマグカップに口をつけ、「甘っ」と漏らす。
「ま、甘いもんは疲れを取るって言うしよ、たまにはな」
思わず言い訳めいた台詞を重ねてしまうも、やはりアーロンは「だな」と同意するだけに留まる。
「アヂッ」
バツが悪くなってグイッとココアを飲んだ結果バッチリ舌を火傷したようだ。異界には痛覚さえもある。
「ティーダもよく火傷をしていたな。猫舌は父親譲りか」
今度は笑いを堪えもしなかったアーロンに、オレは苦笑を漏らすしかなかった。

………………………………………

何年かに一度急に飲みたくなる程度なので、砂糖が別投入だったか全く記憶にない。
甘くないココアってあるんだっけ
スポンサーサイト
CATEGORY : 365日のお題



Copyright © JSNO3(仮) All Rights Reserved.
テンプレート配布者:サリイ (素材:ふるるか) ・・・ 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。